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Vol.11 - 2
2004/01/10発行

近藤 毅  新任教授の御挨拶 

   高次機能医学講座 精神病態医学分野(旧精神神経科講座)教授 近藤 毅
はじめまして
 平成十五年四月一日付をもって、小椋力教授の後任として琉球大学医学部・高次機能医学講座・精神病態医学分野を担当させていただくこととなりました近藤 毅(こんどうつよし)と申します。
 私は昭和五十八年に弘前大学医学部を卒業し、一年の内科研修モラトリアム(?)を経て、昭和五十九年に弘前大学神経精神医学講座に入局しました。幸いなことに、てんかん研究では歴史のある弘前大学神経精神医学講座において、「てんかんと妊娠」に関するプロジェクトに参加させていただき、抗てんかん薬の催奇性の機序を薬物・代謝動態学的側面から検討する研究に取り組みました。当時は助手であった兼子直教授や現在山形大学神経精神医学講座教授となられた大谷浩一先生の温かく、しかも、熱意溢れるご指導のもとで(決してスパルタではありませんでした)、催奇性の臨床危険因子と毒性代謝産物の動態との間に密接な関連が見出される結果となり、それが自身の学位論文となりました。大学院修了後、研究範囲を向精神薬の臨床薬理学の領域に拡げ始めた時期に、兼子先生のご紹介で、英国ウェールズ大学医学部臨床薬理治療学教室に留学させていただくこととなり、病態生理が抗不安薬の代謝におよぼす影響、をテーマとして薬物動態学および薬理遺伝学を勉強する機会に恵まれました。これを契機に、帰国後は、向精神薬の臨床反応をどう予測するか、という問題を主要テーマとし、薬物・代謝動態学または薬理遺伝学的な観点から様々なアプローチを試みてきました。平成九年からは、自身が研究グループを率いる役割となり、オーダーメイド化を可能とする精神科薬物療法に向けて、中枢神経受容体遺伝子多型を用いた薬物反応予測の臨床応用化を目指してまいりました。その間、若手研究者達がみな研究熱心でめきめきと力をつけ、私の役目は次第に総合雑務係のようなものとなり、頼もしい若手の熱気に引っ張られる形で今日まで至ったような気がします。
 さて、こちらに赴任してからの役割・状況の変化は著しく、平成16年からの大学の独立行政法人化や卒後臨床研修の義務化を控え、私達は大きな変革の波の真っ只中に置かれているようです。治療機関としての病院および研究機関としての講座には今後は経営の感覚が必要不可欠とされ、教育・研修機関としても他機関と競合しながら、学生・研修医からは逆に評価・選別を受ける立場にも立たされます。競争と自立の厳しい時代であることを痛感しますが、「過剰な危機感を抱えず、ある種の楽観を持って未来を見つめ、今備えていくこと」と、自身に言い聞かせながら自己精神療法を行っている毎日です。専門性を備えた活気のある臨床現場、国際的にも通用する先進的な研究活動、精神医学の重要性を実感してもらうための教育・研修システムの構築など、今後の将来計画を展望するにあたり、これから数年間がどれだけ忙しくなっていくのか気が遠くなりそうですが、まずは足元を見つめて地道に一歩ずつ進んでまいりたいと考えております。
 北国育ちの私がどういう巡り合わせなのか日本最南端の沖縄に移り住むこととなり、不思議な感じがいまだに抜けない状態ではありますが、初めて触れる沖縄の気候、土地柄、文化は私にとって大変興味深いものばかりで、きっと精神医学的にも新しい経験ができそうな予感もします。今後とも琉球大学医学部医学科同窓会の皆様方の温かいご指導ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。